福島県相馬市の小学校で2012年にインスタントカメラを用いたワークショップ。
東日本大震災の後、日本という国を選んで住んできている外国人の作家として、どのようなことが必要かを考えているうちに、その中にいる子どもたちの心の視線が気になり始めていた。お金や救助物資では助けることのできない、写真を通してのワークショップという体験を送りたいと思って、相馬市で始めたのが「SHUN Project」である。
「SHUN」は、「瞬、春、旬」という意味が込められている。旬となる瞬間を捉えることで描く春のような希望を、子どもたちは日常の中で見つけていた。デジタルが普通になっている今において、あえて枚数が限られている「インスタントカメラ」を使ったワークショップだった。古いメディアを、子どもたちはおもちゃのように、ニューメディアとして使っていたことが印象的だった。撮影の時には、白、黒、赤、青、緑、三角、四角、丸、自分、好きなものという10つのテーマを与えていたが、テーマの要素が重複している、面白い写真がたくさん撮れていた。
マスコミでは見られない、子どもたちによる表現をワークショップで見て、撮影ワークショップの後には出来上がった写真をみんなで読み取る鑑賞の時間を儲けた。友達が心で見つめた様々な日常の風景を、また自分の独自の視線で見て、言葉で表現していた。しっかり自分の中の声を、映像言語や文字など自分の言語で表現できるようになることが、福島の子どもには最も大事だと考えた。ワークショップに関わったスタッフや、展示した写真を見た観客からは、子どもたちの視線を見るだけで何かのパワーをもらったとのことが多かった。そこには、子どもたちの心の声が見えていたからだと考える。写真が日常の中で手軽に撮れ、目に触れるようになってくる今だからこそ、リテラシーを持って考えて欲しい。